令和2年7月26日(日)勉強会資料

JW.Jの会員の皆様

このたび7月の勉強会で司会を務めます内と申します。

前回6月、矢野さんが行いました「現代人のための哲学」1章〜5章を受けて、引き続いて「第6章」を扱います。

当初、「6章・7章」と併せて纏める考えもありましたが、渡邊夫人の提言をふまえ、それぞれきちんと切り分けて、かつて渡邊先生が放送大学で構成された講座「6章」を生のまま扱う形に変更し、「第7章 生きる根拠(渡邊先生の名著『自己を見つめる』の小聖書とも位置付けられる章)」については、次回8月、大本優花さんが心よく担当を受諾してくださる運びとなりました。誠にありがとうございます。


さて、手がけてみるとやはり提言どおりに「第6章 人間の内面性」にしっかりと限定することの意義と重要性を思い知らされました。


この章で語られる論理展開の明晰さは、人間の本当のあり方、そして哲学することと「実存」の意義について平易に説かれておりますが、しかし実に深い思索を可能にしてくれます。取り組んでいくなかで自分自身の人生を思い巡らしながら極めて感慨深く、味わうことができました。



当日は、以下のようなスケジュールで構成しようと考えております。

① まず、この章の「概要」について分析する

② 次に、放送大学でのこの章の渡邊先生の講座をあらためて拝聴する

③ 人間の内面性を考えるにあたり、渡邊先生のテキストを敷衍し、我々が当たり前のように陥りやすい考え方や間違った考え方について確認する

④ この章で渡邊先生がピックアップされた「実存」に関わるキーワード、重要概念について再確認する

⑤ 【今日の論題】について全体で意見交換し議論する



展開は以上になります。


上記スケジュールの、「①と⑤」 については以下の通りです.


***************************************

① 概要分析

第6章「人間の内面性」の分析メモ 

概観:“2つのトピック”に分けて論を展開

〔1〕 自己の人格の内面性
〔2〕 実存的に生きる


〔1〕『自己の人格の内面性』においての重要主題


1. 「身体と自分」について検討されている

2. 「睡眠・忘却・覚醒」についてふれ「意識一般」について解説されている

3. 「自己」の定義についての論を展開している

4. 「人格性」とは何かが論点になっている

5. 「内面性」とは何かについて定義づけしている

* パスカルとニーチェ、荘子を例にとり意識についてふれている

* キルケゴールの思想を基に内面性・人格性・自己性を定義している


〔2〕『実存的に生きる』では

〔1〕を土台に 「実存」を定義し、自己を形成し「生きること」とは何かについて解説している


* ハイデガーとヤスパースという、2人の哲学者に触れながら実存思想に関する主要な専門用語を取り上げ、それらの概念を通して人生を考察するあり方やその方法と意義を示し、実存的に生きることを明示している


[実存](世間と個の自分の間を行き来し「自分らしさ」を求め自己実現し自己生成する)

:未来の可能性へと向けた自己実現を目指し、自分を自覚し自分自身を納得させる生き方


死ぬことが運命づけられている「存在の実相」、そうした「自分を超えた大きな力」のことをヤスパースは「超越者」、ハイデガーは「存在の真理」と表現したと解説されている。


〔第6章結論部分〕

 生をうけ死に至るまでの時間性の中で自己生成し自己実現を目的に生きることの重要性とは

* 「存在の真理を哲学的に信仰」すること

* 「愛と良心に基づく行為を実践」すること



渡邊二郎著『現代人のための哲学』(ちくま学芸文庫)147頁 9行~11行

“あるいは、世界を越えた超越者を、生命や意識一般や精神を越えた実存の中で、理性の極限において、哲学的に信仰することが、重視された。愛と良心にもとづく行為と実践が大切となっていったのである。”

~テキストでは、以上の文章でこの第6章が締め括られている.



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

⑤【今日の論題】

 筆者は『現代人のための哲学』第6章の最後に、“理性の極限において、哲学的に信仰することが、重視された”と書かれている。ここでいう哲学的に信仰するということの意味とあわせて、あなたにとって「哲学的に信仰する」とはどういうことかを論述せよ。

JW. Jの会

故渡邊二郎先生を慕う哲学の会。渡邊先生は東京大学文学部、同大学院で学び、成城大学助教授を経て、東京大学文学部助教授時代にハイデガーの思想研究のためドイツ・フライブルク大学に留学。東京大学名誉教授、放送大学名誉教授。

0コメント

  • 1000 / 1000