JW. Jの会の皆様へ
仙台の森です。ご無沙汰しています。見かけはひたすら美しくのどかなコロナの春を、いかがお過ごしでしょうか。
東北地方は、「過密」な関東に比べると「過疎」(?)なので、それほど切迫しているとも思えないのですが、ご多分に漏れず外出自粛が叫ばれ、街はひっそりとしています。学校も休校が続き、大学はすべてテレ授業です。先日、ようやく緊急事態宣言が解除され、自分の研究室にどうにか自己責任で入れるようになる見込みで、やれやれです。
県境を越える遠出は厳禁ということで、珍しく仙台市内でおとなしくしています。といっても仙台市は広く、わが大学宿舎のある青葉区など、山形県境までの広大さを誇ります。山形へ行く旧街道の途中の広瀬川上流沿いに、作並(さくなみ)温泉という小ぶりの温泉街があります。その手前に――拙著でも言及したニッカのウイスキー工場があるほか――「鳳鳴(ほうめい)四十八滝」という、いくつも滝の続く名所があり、わが家は車でたまに出かけます。おめあては、滝の近くにあるソバ屋です。
鳳鳴四十八滝
そこから作並街道の脇を分け入ると、定義(じょうぎ)如来という名称で知られる名刹、西方寺があります。門前のお店で食べられる「定義三角あぶらげ」もいけるのですが、私の一番のおすすめは、境内の奥にそびえる五重塔です。1986年に落成法要の営まれた比較的新しい建物ながら、重厚かつ優雅な佇まいは何度観ても飽きません。平家の落人伝説の由緒のある古いお寺に、昭和末期の総青森ヒバ造りの堂宇がそびえ、ひなに居ながらにして古都古寺めぐりのみやびな気分に浸れます。
西方寺五重塔
仙台の温泉と言えば、太白(たいはく)区の秋保(あきう)温泉。この春、高校時代の水泳部仲間と温泉に浸かろうと同窓会を企画したのですが、コロナであえなく中止。作並も秋保も、長引く総自粛で温泉街が一気にさびれないかと心配です。コロナ明けには、皆様、ぜひ仙台の温泉においでください(三月に来仙した優花さんもリピートを)。秋保に来たら訪れたいのは――おはぎが有名な地元店「さいち」もなかなかですが――名取川上流にある秋保大滝。滝つぼのすぐ近くまで降りられます。
秋保大滝
こう書くと、あたかもヒマに任せて近郊ドライブ三昧かのように思われるでしょうが、世の中それほど甘くありません。わが家の大衆車(旧型フィット)は、いまだに大宮ナンバーを付けているので、「県外車だ、しかも関東からやって来るとは!」とマークされ、石を投げられかねないと、おののいています。もうすぐシーズン到来のサクランボめあての遠出も断念して、せいぜい宮城の地酒を家でたしなむ程度です。
今回は、コロナ禍で押し込められた憂さ晴らしに、ちょっと趣向を変えて、仙台観光(と美食?)小案内をさせていただきました。満たされぬ欲望がうずいて、よけい悶々となってしまった方には、ご容赦ください。ともあれ、自宅待機の続く毎日は哲学書――おすすめはもちろん『人生の哲学』――を味読して乗り切り、晴れて外出全面解禁の日が来るのを待ち望みましょう。
2020年5月16日 森 一郎
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